夏至がとうの昔に過ぎ去り、日の沈まりも早くなり、秋の訪れを感じさせる9月の終わり。
勝己は元クラスメイトの轟焦凍から、誘いを受けて居酒屋に来ていた。
飲み会の誘いは定期的にあるが、主にそれは上鳴や、切島から連絡が来ることはあるが焦凍から誘われるのは初めてだった。
店の前に到着をしたことをSNSで連絡をしたところ、すでに中に入っているとすぐさま返信が来る。
勝己は店の中に入ると、店員の案内のままに中に進んでいくと、奥の個室部屋に通される。
ガラッと、個室の扉を開けると中にいた焦凍がスマホから目を離し勝己にむかって手を上げる。
勝己はそれを、ちらと見てから靴を脱いで部屋に上がり、対面の席にドスンと勢いよく座る。
そして、被っていたキャップを外して雑に、自分の隣に敷いてある座布団の上に置いた。
「悪かったな。急に呼び出して」
そう一言詫びを入れる焦凍に、「全くだ」と返す。
「ンで?俺を急に呼び出した理由はなんだ?」
つまんねぇ内容だったらぶっとばす。などと不穏なことを考えていると、「まずは何か食おう」と焦斗が勝己にメニューを渡す。
そして自分の方はすでに決めていたらしく、タブレットを手に持ち、ぽちぽちとタッチパネルを操作していた。
「生ビール、あとポテトフライ。サラダ、レバ刺し」
「わかった」
焦凍が勝己の分の注文もタッチパネルに入力をしていく。
注文を終えると、元の場所にタブレットを戻す。
それほど時をおかず、店員が生ビールと、何品か料理を持ってきた。
しばらくすると、店員が生ビール2つと注文の料理を持ってくる。
「おぃ・・・」
「とりあえず、乾杯をするか」
痺れを切らせた勝己が、話し出す前に焦凍の声が割り込む。
相変わらずだなこいつは…と思いながらも、ビールジョッキを手に持ち、焦凍と乾杯をするとごくごくとビールを飲んでいく。
勝己は半分ほど空になったジョッキを、テーブルの上に置いた。
「俺を呼び出した理由ってなんだ」
まわりくどいことが嫌いな勝己は雑談もなくスパっと話を切り出す。
焦凍と特に仲の良かった出久や飯田ではなく、自分を飲みに誘うのだ。
何か用があるに違いない。
焦凍は、勝己のその問いに答えず何故かスマホを操作しだす。
何をやってんだ?と思いつつ目を細めて、焦凍の様子を眺めているとズイッと何故かBloothイヤホンを渡される。
「ア”?」
「防音の個室でも、スピーカーでは流せねぇから、イヤホンをつけてくれ」
理由も何も説明せず、自分がやってほしいことだけを言う焦凍のマイペースぶりに苛つきながら、勝己は乱暴にイヤホンを受取り、両耳に装着する。
焦凍はそれを見届けると、今度は自分のスマホの画面を勝己に差し出す。
「これって、そうだよな?」
主語もなくいきなり何を言うんだこいつは。
勝己がこのぼんやり野郎はよぉ、と思っていると、焦凍はスマホを操作して何かの動画の再生を始めた。
突然始まった視聴会になんなんだと思いながら見ていた勝己は、数分後、クワッと目を見開き、「ハァァ!?」と大声を出した。

0 件のコメント:
コメントを投稿